米日財団: 「米学界からの警鐘:消えつつある日本外交・日米関係の専門家」

将来の日米関係を担う次世代を育成するために、今必要な行動(と資金)とは


このたび、新しい報告書『米学界からの警鐘:消えつつある日本外交・日米関係の専門家』を米日財団より発表いたしました。本報告書は、英語で執筆された「Japan: The Indispensable Ally, Except in U.S. Academia…」の日本語仮訳版です。正式な報告書は英語原文であり、PDFはこちらからご覧いただけます。以下のリンクをクリックすると、日本語仮訳版もご覧いただけます。

アダム・リッフ. 「米学界からの警鐘:消えつつある日本外交・日米関係の専門家」米日財団. 2025年. A4版; レター版

要約:日本とのパートナーシップは米国にとって極めて重要であり、さまざまなグローバルな課題への対応に不可欠である。しかしその一方で、米国の大学における現代の日米関係および日本の外交・安全保障政策に関する専門知と教育機会は、世代交代によって崩壊の瀬戸際にある。この流れを食い止めるためには、学外からの財政的支援が緊急に求められている。 (エグゼクティブ・サマリーはイメージの下にあります)

本稿の主要目的は二つである。①この危機的で残念な現状への意識を高め、②学界内外で対策に向けた議論を喚起することだ。(1)米国の「トップ100」大学における日本外交・安保分野の現状の概観と特に過去20年にわたる若手学者の採用の激減、(2)教員の人数、研究、授業や学生の学習機会の急速な消失がなぜ学界を越えて将来の日米両国にとって重大な問題なのか、(3)潮流を反転させるための具体的な投資・行動提案の三部構成で論じる。

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エグゼクティブ・サマリー

今日のワシントンD.Cでは、日本とのパートナーシップが米国にとって極めて重要であり、様々なグローバルな課題への対応に不可欠であるという認識が、超党派的に共有されている。しかしその一方で、米国の「トップ100」大学における現代の日米関係および日本の外交・安全保障政策に関する専門知と教育機会は、世代交代によって崩壊の瀬戸際にある。

過去20年間における日本の外交政策関連分野での採用の急減は、米国内において以下の役割を担う次世代研究者の育成パイプラインを脅かしている。

  • 日米同盟および国際社会における日本の重要性の高まりに関する深く多面的な理解の提供
  • 学界、経済界、市民社会、政府、メディアなどの幅広い分野で将来の日米関係を担う人材の育成

このような専門知・教育機会の急速な縮小は全国的な現象であるが、特に米国中西部などのこれまで比較的注目されてこなかった地域、いわゆる「赤い」および「紫の」州でより深刻に進行している。

日米関係の将来、および米国全土における相互理解の持続的な発展を重視する関係者にとって、今こそ総力を挙げて行動すべき時である。

この流れを食い止め、日本の外交政策及び日米関係に関する教員の採用、講座開設、研究機会の創出、そして知的プログラムの構築の支援を図るためには、学外からの財政的支援が緊急に必要である。今後、次の三つの相互補完的な取り組みを優先的に推進することが求められる。

  • 米国および日本の企業、財団、慈善家(フィランソロピスト)によるこの分野の支援を目的とする新たな基金(エンダウメント)・助成金の創設
  • 官民連携を含む、影響力を最大化するための積極的かつ創造的な共同出資体制の構築
  • インパクトが最大となる可能性の高い大学や地域における戦略的投資